野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

だんだんたんぼに夜明かしカエル

奈良のたんぽぽの家に行く。

ジャワ舞踊家の佐久間新さんがディレクションするダンス公演「だんだんたんぼに夜明かしカエル」のためのリハーサル。2月に神戸、3月に東京で公演。たんぽぽの家で15年続けてきた佐久間さんのダンスワークショップからの発展で、ついに公演化される。ワークショップの発表会ではなく、15年間のワークショップで熟成され様式化されてきた伝統芸能とでも言ったような即興ダンスがあり、これを持ち運べる舞台公演にしてしまおう、という試み。これは、ある意味、バリ島にあった芸能から、観光/上演目的の「ケチャ」が生み出された過程に似ているかもしれない。たんぽぽの家での日常生活と、佐久間ダンスワークショップは繋がっている場でのみ存在している。それを、別の場所に移植可能なパッケージへと変え、洗練していく作業かもしれない。しかし、その公演が極度に鑑賞用にのみ洗練されるのでなく、現地での雰囲気やエッセンスを残し、現場の空気感が体感できる、そんな劇場作品を作れないか、というのが、今回の大きな課題である。

この任務を佐久間さんが担っていて、ダンサー/振付家の砂連尾理さんがアドバイザーで、野村誠は音楽を務める。本日は、砂連尾さんと野村が参加して、リハーサルを見た。即興で行われることのエネルギーの素晴らしさに圧倒されるが、と同時に、この場では成立するが劇場に移植した時には成立しにくい要素を丁寧に取り出し、ブラッシュアップしていく作業が必要なので、そこを丁寧に進める。

リハーサルの後半になって、香港からi-dArtのメンバーが6人で視察にやって来た。4月には、香港で知的障害の人とアートに関する国際会議を開催し、これが、イギリス、ベルギー、スペイン、アメリカ、シンガポール、オーストラリア、台湾、日本、香港からゲストが大結集する凄いイベントで、この準備のために、日本にやって来ている。

佐久間さんのリハーサルを見学して、ベリーニが言ったことが印象深い。香港での障害者の舞台芸術では、軽度の障害で身体的にそれほど障害がない人が舞台に立つことがほとんど。今日のリハーサルに出ていたような人は、香港で舞台に立っているのを見たことがない。それが、このような美しさを持つこと。そして、長時間の集中した公演になることに凄く引きつけられたこと。来年6月に、砂連尾+佐久間+野村で行う公演に、香港のJCRCの利用者の人たちがアーティストとして参加することが、本当に楽しみになった、と言った。

その後は、たんぽぽの家常務理事の岡部太郎さんを交えて、作品づくりの根幹から再確認する徹底トークの後、香港チームを交えての交流会。鍋をつつきながら、語り合う。

自宅に帰って後、打ち合わせ。