野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本語のリズム

7月17/18日の福岡での公演、「野村誠の左手の法則」の第3弾、「福岡市博物館REMIX」に向けて、準備中なのですが、そのうちの2作品(演劇とアートマネジメント)が、スティーヴ・ライヒみたいだなぁ、と昨日、思っていたわけです。で、Steve Reichの本をペラペラめくると、音楽と言語の関係についてのインタビュー記事が出てきました。その中で、当たり前のことなんですが、ロックは、英語やドイツ語があっていて、フランス語のロックを聞きたいとは思わない、とか、ベルカントはやっぱりイタリア語が合っている、みたいなことが書いてあって、言葉の特長と音楽には密接に関係がある、ということを、ライヒが語っています。

ライヒは英語を喋るわけで、英語でインタビューした言葉を素材に、ドキュメンタリー・ミュージックを作ったりしているのですが、言語と英語のリズムやイントネーションは、日本語とは全く違います。ひとまず、今回、ぼくは日本語を母国語とする作曲家として、日本語を素材にループを作っているので、日本語ならではのリズムやイントネーションを浮かび上がらせることが可能なはずです。

ということで、言葉の奏でる音楽に、さらに耳を傾けていこう、と思います。

世界を揺らす響き

ガムラングループ「マルガサリ」のコンサートを見に行きました。

ぼくが非常に良いと思ったのは、伝統曲と、佐久間新監修の「SANZUI」という曲でした。この二つは何が良かったか?なぜ、ぼくは、この二つを良いと感じたのか?

どちらも、一つ一つの演奏者や楽器が主張しているのではなく、そうした音が融合して、本当に絶妙な響きを作り出していたこと。その響きというのは、音の響きなのですが、世界そのものを揺らす響きであったことです。その他の試みは、ガムランによる新しい世界を模索する意欲は高く評価すべきと思うのですが、個々のパフォーマンスや音が情報として、イベントとしては存在していて、しかし、世界を揺らす響きにまでは到っていない、と感じました。

世界を揺らす響き、それは、非常に尊いものだと思います。どうして、そうなったり、ならなかったりするのか、音の不思議であり、世界の不思議だ、と思います。