野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

北九州芸術劇場で

北九州へきました。小倉城のすぐそばの劇場。

平日なのに、14時〜19時の5時間ワークショップに15名ほどの参加者。全員が演劇のワークショップ指導者などをやっている方々らしく、その研修らしい。コーディネートは吉野さつきさんで、第1回が平田オリザさん(劇作家・演出家)、第2回が堤康彦さん(NPO芸術家と子どもたち)、第3回が吉野さつきさんで、第4回が山下残さん(振付家・ダンサー)を受けての5回目。

ぼくは、今日、何をすべきなのか?どうしてぼくが呼ばれているのか?そういうことを、漠然とだけど納得できないで、当日を迎えました。自分の活動を紹介したり、何かみんなで音楽を体験するワークショップらしきことはできるが、本当に、今日という日になぜ小倉に行かなければいけないのかが、自分で分からなかったのです。

で、家を出る直前に、突然、今日は何をすべきかが分かった!と思えた。ぼくは何かを教えに行くとか、伝えに行くとかではなく、ぼく自身がまだ言語化できていないけど、もやもやと考え始めているテーマについて、疑問をぶつけてみる場。そういう場を体験するために、行くんだ、と思えた。

さて、ワークショップです。「Intermezzo」をピアノで弾いたら、参加者の中で聴いたことがある人が何人もいて、びっくり。なんと、砂連尾理さんのワークショップで、ぼくのこの曲を使っていたのだそうです。うれしいなぁ。

今日やった中では、鍵ハモを使って、水戸の「まるく」を発展させたこと。「屈辱」と「東京特許許可局」と「パイナップル」と「おおはた」の4つのパートから成る7セクションからなる曲。その発展からできたフレーズがよかったので、これをもとに曲を書いてみたい、という気がしてきました。今、書きたい曲がいくつかある。イギリスでやった「Bookology」も曲にしたいし、「まるく」も曲にしたい。

ディスカッションは、途中までになった気がするし、この続きを、きっと各自が考え続けていることだと思います。今日、ぶつける質問・疑問は、

日本のアートシーンでは、

かつて「ワークショップ」ブームが起こり今は、越境して「コラボレーション」ブームが訪れています。

このブームは、しばらく続くと思われるし、多ジャンルの人と交わっていくことが、続いていくと、アートの雑種化、アートの雑食化が進んでいき、そういうことが当たり前になります。さて、もうすぐ、そういう状況が現実になりますし、もう既になりかかっています。さて、その状況に、何を仕掛けていきますか?

動物園や小学校や病院や商店街でアートプロジェクトをやる状況も生まれてきている。天文学と美術、医療とアート、アクセサリーと音楽、介護と演劇、、、、、、。作曲家の野村誠が振付作品を作り、美術家の高嶺格が舞台作品を作り、美術史学者の野村幸弘が映像作品を作り、、、、、、、

こういうことは、ここ数年で、あちこちで当たり前のように起こり、越境どころか境界線自体が不明瞭な状況が生まれてきます。もはや、「演劇人と音楽家をつなぐ」とか「教育とアートをつなぐ」とか、しなくても、自然にどんどんつながり始めているわけです。そういうセッションが溢れて、豊かな混沌が生まれた時が、確実に迫っている。さて、その状況で、ぼくたちは次に何を仕掛けていくか?

これが、今日の問いです。この問いの続きを、ぼくも考えるし、吉野さつきさんも考えるし、北九州の方々も考えることでしょう。それが明日からの旅です。

北九州の皆さん、貴重な機会をありがとう。また、会いましょう。

明日から西日本ツアーです

明日から、西日本ツアーです。

明日18日は、北九州芸術劇場でワークショップ

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19日は、山口でライブ
野村誠の鍵ハモソロ+地元パフォーマーとのセッションも
スタジオイマイチ
19:00
先着:30名
入場料金:2000円
お問い合わせ:070-6681-3977


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21日は、広島の呉で、寺内大輔さんがやっている「ツキイチ即興ナイト」にて、ワークショップ+ライブ
Plan U(呉市三条4丁目3-10 Plan U、JR呉駅徒歩10分, 呉市営バス「三津田橋」前)
18時30分〜20時30分
(18時30分スタートですが、会場は18時から開いています。18時30分までの間は、ご自由に即興をお楽しみください。)
参加費1000円(ワークショップのみ, フリーセッションのみご参加の方は500円)
お問い合わせ: tamahoアッとまークhi-ho.ne.jp、090-2801-1510(三宅)

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22日は、大阪(新大阪)で上田假奈代さんの企画で「のむらまことの旅する音楽」の第3回目
19:00
料金 1500円
第1部がトーク+ピアノ演奏、第2部がワークショップです

会場:アートスペース ココ
533-0033 大阪市東淀川区東中島4−4−4
(東淀川体育館のした)
tel.08038241657 *常勤者がいませんので、当日のみ
地図:http://www.kanayo-net.com/cocoroom/2008/shop.html


主催 特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)協賛 アサヒビール株式会社
お問い合せ・申し込み tel&fax.06-6636-1612(ココルーム)
cocoroom@kanayo-net.com


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お会いできるのを楽しみにしています!!!!!!

ヒューのマネージャーをやる日

1月のヒューのワークショップの打ち合わせ。

新井英夫さん

1月12日に、新井英夫さんと企画中です。新井さんとお話して、「即興」というキーワードは入れたいなぁ、というのと、ダンスの人も音楽の人も参加できるといいなぁ、という話が出ました。ということで、

1月12日は

即興で音楽とダンスをつくる
14:00〜18:00
参加費2000円
講師:ヒュー・ナンキヴェル(音楽家
アシスタント:新井英夫(ダンサー)、野村誠(音楽家
定員:25名程度

ということに、なりそうです。

苅宿俊文さん

1月10日に、ヒュー+野村のワークショップを、青山学院大学教授で、NPO法人「学習環境デザイン工房」代表の苅宿さんと企画中です。同大学特別研究員でワークショップデザイナーの高尾美沙子さんも打ち合わせに参加。

苅宿さんは教育の現場では、あまりにも「一斉に」、「等質」に学習を進めてしまうことが多いことを変えていきたいと考えていて、もっと異質な人が混ざった場で、学習ということができないか、と考えているようです。つまり、子どもだけを対象にしたワークショップとか、指導者を対象にしたワークショップとか、を企画するのではなく、大人と子どもと大学生なんかが、同じ場に混ざって体験するワークショップに関心がある、とのことでした。ということで、

1月10日は、

大人も子どももヒューさんと音楽を楽しもう
13:00〜16:00
講師:ヒュー・ナンキヴェル、野村誠
定員:20名程度

ということになりそうです。

会場や、申し込み方法など、追って、このブログでも発表します。

Frunmanized Music @ Glen House Montessori School

Hebden Bridgeにあるモンテソーリスクールでワークショップをしました。
モンテソーリについては、不勉強なのでよく知りませんが、幼児教育の分野などで、日本でもよく話題にのぼる教育をしているようですが、ぼくは、全然知りませんでした。

演出家の友人の子どもがそこに通っていて、ワークショップを頼まれた。

学校は、はっきり言って、一軒の家という感じ。生徒は、幼児から10代まで合わせて20人くらい。
ワークショップは、5歳以下の5人との1時間、5〜8歳の6人と1時間、午後は、8歳以上の6人と1時間といった感じ。

人数も少ないし、ほとんど即興。

午後のグループでは、楽器をやって、壁や椅子など楽器じゃないのをやって、と交互にやる曲「Frunmanaized Music」という曲ができました。このFrunmanizedというのは、子どもの造語で、FunとFreeという(楽しいと自由という)2語を合体させて動詞にしたようです。

その後、Bookologyという造語の本を演奏する曲もできました。

with children or for children

ヨーク大学の大学院のコミュニティ・ミュージックの授業に、3度目の飛び入り参加。
今日は、notated and un-notated musicというテーマで各自が楽器を持ってくるように言われているセッションだったので、様子を見に来ました。

で、講義は、とにかく概説ですねー。

例えば、作曲の仕方もいろいろあって、と列挙していきます。その中に、フィボナッチ数列とか、フラクタルとか数学のことも、話すけれど、例えば、フィボナッチ数列バルトークが曲の構造に使っていることには触れなかったし、そういう数学をどうやって作曲に生かすかを具体的に説明しないから、講義を聴いても、それが身につくとは思えないなぁ。だから、グループに分かれて、講義で列挙したどお方法でもいいから、曲を作ってみよう、と言った時、数学など、今ひとつ説明不足のものには学生はチャレンジしないので、グループ1は、自然のもの(落ち葉や石など)を拾って楽譜をつくる、グループ2は、カードを使って即興的に演奏する、という選択をしました。多分、どっちも楽にできる課題だったと思うのです。

でも、敢えて、もう少し課題を限定して、「石の模様の形に着目して作曲する」、「フィボナッチ数列を使って作曲する」など、少し普段やっていないことを学生に強いてみる方が、学生にとっても発見が多いかもしれないな、と思いました。

それから、activities for childrenとか for old peopleとか、そういう表現が気になりました。ぼくは、forではなく、withをやっています。composing with childrenであって、for childrenではありません。music with animalsであって、music for animalsではない。

withと言った時に、野村と子どもが一緒につくる。作曲家と小学生が一緒につくる。それは、教育でも、レクリエーションでも、セラピーでもなく、コラボレーションです。forと言った途端、コラボレーションの視点がなくなっていく。そのことを感じました。

パルス・パラノイア

本日も、ヨーク大学の授業に飛び入り参加。
いろいろ、ウォーミングアップのための活動などを紹介したり、学生がやっていくのを見て、イギリス人の人々はよくも悪くも、拍をキープすることに、偏執狂的だと思いました。これが、今日の発見。

拍をあわせようとしなくても、みんなでたたいていれば、なんとなく合ってきたりするし、逆にクセナキスやナンカロウやリゲティの音楽のように、各自が見事に違ったテンポでバラバラに演奏することの方が、難しいのにな、と思いました。パルス・パラノイアだ。いずれ「パルス・パラノイア」というタイトルの曲を書こうかな。

これは、ホエールトーン・オペラの「どうやって実がなるの」でやったことですが、自然にいつの間にか、全くのトーン・クラスターが協和音に近づいていきます。全員で同時にリズムを始めれば、最初は全く全員が違ったテンポで始められますが、しばらく続ければ、だんだんあるビートが生まれてきます。逆に合わせないことの方が難しい。

14年前にヨークで受けたBruce Coleの授業と同じエクササイズを彼がやったのが、面白かったです。

ヨーク大学の大学院で

ヨーク大学の大学院のコミュニティ・ミュージックの授業に出ていいと、Bruce Coleから言われたので、じゃあ出てみるか、と出てみました。

ま、いいんですが、「コミュニティ」とは何か、「ミュージック」とは何か、「社会」とは何か、という言葉の定義をきちんとしないと、各自が違った意味で言葉を語っていて、それは机上の空論になりかねないと思いました。「皿投げは音楽か?」というエピソードがあるように、色んな人が色んな意味で「音楽」という言葉を語っているという大前提を考えないと、結局、大多数の人の考えを中心に世界が回っていく、と思いました。

しかし、そういうことを、つたない英語で話していると、なかなか伝えきれずにもどかしいので、まあ、文章に書いていくのと、自分は音楽家なので、音楽でやっていくしかないと思いました。