野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!(3日目)

8月27日のサントリーサマーフェスティバルで、ホセ・マセダを指揮する。その関係で、東京少年少女合唱隊の花沢先生と電話で打ち合わせ。ガムランのチューニングで歌っていただくこと、譜面をどうするか、練習の進め方など、色々お話する。

 

ジェーンとの3日目。今日は、愛知大学で82人の学生への3時間のワークショップ。講義名は「表現実習」。ジェーンと朝打ち合わせをして、進め方を考える。

 

1 自己紹介の演奏

2 ボディパーカッション

3 紙の演奏

4 グループワーク

 

休憩の後、

 

5 ジェーンの活動の紹介

6 野村の活動の紹介

7 箸で演奏

8 グループワーク2

 

こんな流れ。ジェーンは豊かな顔の表情とジェスチャーで言葉を介さずに、どんどん学生とコミュニケーションを成立させていく。さすが。(82人との3時間でヘトヘトになり、ぼくはソファで瞬間昼寝をした)。

 

夜、オンライン取材で、だじゃれ音楽の12年を振り返ることができて、コマーシャルな商業音楽も、洗練されたアカデミックな現代音楽が陥って行き詰まる「おしゃれ音楽」の袋小路に、「駄」を追加することで、無限に世界が広がっていくことを、自分自身で言語化できる貴重な機会だった(もちろん、そんなことは石橋鼓太郎論文で、ちゃんと言語化されている)。

 

明日の通訳を務める樅山智子さんも合流してのディナー。ジェーンと吉野さんと4人で色々語り合う。

ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!(2日目)

ブリティッシュ・カウンシルの助成で、吉野さつきさんのコーデイネートで実施の『ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!』の2日目。本日は、岡崎市の本宿にある冨田病院でのデイケアのお年寄りたちとのワークショップ。本宿のお代官様だった冨田家は、明治時代に病院を開業し、3代目の長男の冨田勲さんが音楽家になったため、次男が病院を継ぎ、その息子の冨田裕さんが現在院長である。冨田勲さんが音楽家になったから、今の院長が病院を継いでて、今、ここに我々がいる。不思議な出会いである。

 

冨田勲(1932-2016)は、日本の最初のシンセサイザー作曲家として知られる。数々の功績があるが、《展覧会の絵》をシンセサイザーで斬新なアレンジをしたレコードがアメリカで爆発的にヒットしたことでも知られる。

 

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大河ドラマやテレビ『きょうの料理』の音楽など、テレビの音楽も数多く作曲。

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お年寄りとの1時間のワークショップと聞いていて、1時間だけの短い一期一会だと思っていた。実際には、1時間だけど1時間ではなかった。スタッフの方々は、コロナ以降、初の外部からのゲストを迎えるための細心の準備をして臨んでいたし、お年寄りの中には、今日のために美容院に行った人、服装を時間をかけて選んできた人、お礼の挨拶を英語で言うために練習してきた人、色々だったようだ。実際の1時間の交流で美しい瞬間が数多くあったこと、ジェーンのコミュニケーション能力の高さは言語の壁などあっさり超えていくこと、を体感した。職員の方々との意見交換の時間では、あるお年寄りが帰りの送迎の車の中で、認知症のために何があったかは忘れているのに、「俺、今日、何かいいことあった?」と言いながら、終始笑顔であったり、普段、暴力的な振る舞いをする方が、ジェーンとの音楽的な濃密な交流を経て、部屋に戻られた後も、リズムをとり続けておられたとか、両手に杖をついて歩いている方が立ち上がって踊り出したとか、奇跡とも思える報告を数多く聞き、たった1時間なのに、それはすごく濃い1時間だったのだ、と改めて思う。

 

冨田病院の院長ご夫妻、吉野さん、ジェーン、施設の方と会食。冨田院長の地元への熱い思いを聞き、冨田家の歴史を聞き、素晴らしきシェフのお料理に感嘆し、最後にはお礼のミニ演奏もして、ホテルに戻る。濃厚な1日だった。

 

 

ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!(1日目)

豊橋のホテルで、Jane Bentleyと再会。いよいよ『ジェーンとノムのみんなでつくろう!いきなり音楽プロジェクト!!』が始まる。ジェーンと対面で会うのは2017年4月にスコットランドで会って以来6年ぶりだ。

 

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ただ、2019年から何度もオンラインで会って打ち合わせをしてはコロナで延期をして、オンライン会議を10回以上しているので、6年ぶりだけれども、6年ぶりな感じはしない。吉野さつきさんと3人で、これからの1週間の打ち合わせ。

 

5月30日 冨田病院での高齢者とのワークショップ

5月31日 愛知大学での大学生とのワークショップ

6月1日 オリエント楽器でのトーク『音楽ワークショップの可能性とファシリテーション コミュニティをこえて音楽でつながる』

6月2日 ばったら堂での民話リサーチ

6月4日 オリエント楽器でのワークショップ『むかしばなしから音楽をつくろう!妖精、妖怪!?昔話の世界を音楽でかたろう!』

 

3人で打ち合わせの後、愛知大学に行き、5月31日のワークショップの会場を下見すると、壁や柱がいきなり楽器になりジェーンとセッションが始まる。その後、冨田病院に行き打ち合わせ。岡崎にある冨田病院は、シンセサイザーの作曲家冨田勲さんのご親戚で、冨田勲さんが育った場所でもある。のこさんと再会。スタッフの方を交えての打ち合わせ。コロナ以降、音楽活動を一切行なっていなかったらしく、コロナ後、初の試みらしい。

 

100円ショップで、箸を大量に買い込む。ワークショップで演奏に使うため。今日は3人でいっぱい話し込んだ。ようやく一緒に会えたので、お茶をするのも、ご飯を食べるのも貴重な時間だなぁ、と改めて思う。

アートシーン/《土俵にあがる15の変奏曲》/鈴木潤さんとのアルバム/豊橋へ

ホテルをチェックアウトする前に、NHKEテレ)の『日曜美術館アートシーン』を見る。不知火美術館の展覧会『おかえりなさい、シスコさん』が紹介されて、ぼくが豊川小学校5年生(現在は6年生)と作った歌も放送された。子どもたち、テレビ見たかな?

 

野村誠作曲《土俵にあがる15の変奏曲》(2019)の東京初演は、ちょうど4週間前。その記録動画が公開になった。鈴木舞さんの研ぎ澄まされたヴァイオリンの熱演、ピアノの齊藤一也さんの安定感抜群のピアノの快演が素晴らしい。途中で登場する日大相撲部の岩本真輝さんと音楽家の取組ももう一つの見どころ。

 

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本日は、京都の鈴木潤さん宅を訪ね、二人のデュオアルバムのミックス作業。これで、全曲編集も終わりタイトルもできたので、アルバム公開間近。

 

豊橋に移動。スコットランドから来日のJane Bentleyと吉野さつきさんとのプロジェクト。2020年3月にやる予定だったのに、コロナで延期が続き、3年経ってついに実現。待ち遠しかった。いよいよ明日から始まる。

 

 

滋賀の太鼓リサーチ

滋賀リサーチ。びわ湖・アーティスツ・みんぐる2023『ガチャ・コン音楽祭Vol.3』に向けて。コーディネーターの永尾さん、野田さんと待ち合わせて、湖東に向けて出発。今年度は、近江鉄道高宮駅の魅力に出会い、高宮神社で太鼓祭りがあることを知り、そこから滋賀の太鼓をリサーチする方針になる。また、子どもたちの参加を目論む。まずは、愛荘町立歴史文化博物館に行く。びわ湖芸術文化財団の福本さん、後藤さん、大阪音大の学生で『ガチャ・コン音楽祭』を卒業研究にする青空くん。さらにヴァイオリニストの啓さんが一家で合流。金剛輪寺に伝わる豆の木太鼓とその民話について知る。ここの博物館は、能舞台や日本庭園も素晴らしく、年6回も企画展を行う。学芸員さんも丁寧に解説してくださる。

 

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曳山の山車も展示されていた。以下の動画を見ると、1:45あたりで金属音が入っているのだけど、これは何かな?気になる。

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午後は、愛荘町山川原の杉本太鼓商を訪ねる。350年の歴史のある伝統産業。美術家の藤野さんも合流。巨大な太鼓を叩く喜び。牛の皮をなめして太鼓にする工程など、色々教えてもらう。皮が緩むと張り替えるらしいが、張り替えたら古い皮は破棄するのだろうか?そうした皮に絵を描くとか、そうした展開もあり得るのかも。彦根の古城太鼓のことも聞く。

 

 

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その後、本番の会場候補である高宮駅を見学。鉄道用語では二面三線という独特の構造の駅らしい。実際に動いてみると、次々にアイディアが出てきてイメージが膨らむ。ホーム内にある小屋が魅力的。

 

啓さん一家が帰って後、2年前に藤野さんと初めてトークをした思い出の場所エコールに移動し、打ち合わせ。2年前に初対面だった人々と交流を重ねて、少しずつ理解が深まってきている。

 

藤野さんとの打ち合わせの後、残りのメンバーで打ち合わせ。今後の進め方や広報、イベント名などについて、活発に意見を交わす。今回は、太鼓づくりに焦点が当たったが実際に太鼓を活用した芸能のリサーチもしたい。伊吹山の太鼓踊りをリサーチすると良いのでは、と福本さんから提案。これは、太鼓もあるけど、踊りもあり、メロディー(笛)もあるので、色々な方面からアクセスできそう。

 

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ということで、皆さん、おつかれさまーーー。

《たいようオルガン》名古屋初演/Cafe Lapin Agile/《タリック・タンバン》初練習

《たいようオルガン》名古屋初演!本当に素晴らしかったーー!!

オルガンのあらゆるパイプを鳴らし、音色を七変化させて、超カラフルな石丸由佳さんの音づくりと両手両足を駆使した熱演!!!

ソプラノの美声から、役者のような語りまで、全身から波動が溢れ出てくる小林沙羅さんの歌声!!

そして、小学生たちが嬉々として鑑賞してくれている客席の熱気!!

作曲者として、幸せすぎて、泣いて笑ってキュンとなる濃密な本番だった。音響、照明、映像操作(荒井良二さんのカラフルな絵本)とスタッフワークもばっちりなのは、水戸から山本さん、高巣さん、高木さんが来て、愛知の劇場スタッフとうまく繋いでくれている。そうそう、由佳さんの今回のアシスタントは、こちらの劇場のオルガニストである都築さん。水戸と愛知のコラボ具合がうまくいってた。水戸の芸術監督の中村さんも駆けつけてくれたし、愛知のプロデューサーの藤井さんとも久々の再会もできたし、、、。次回(未定)が待ち遠しい!!!!

 

せっかくの愛知滞在なので、先月、やまなみ工房を見学した時に、たまたま一緒に見学ツアーに参加していた方のカフェが一宮にあるので訪ねてみた。cafe Lapin Agileというお店。オーナーの岩田さんが駅まで車で迎えに来て下さり、ケーキセットをいただき楽しい滞在。

 

京都に移動。ホセ・マセダのスコアを分析しまくる。

 

夜はガムラングループ「マルガサリ」のスタジオでリハーサル。新曲《タリック・タンバン》を初めて音にしてみた。初合わせでも、既にめちゃくちゃいい感じ。しかも、やりながら、どんどんインタラクティブにアイディアも出てくるので、今日だけでもアップデイトされて展開いっぱいあり。一人の作曲家の音楽ではなく、一人の作曲家が作った枠組みを起点として、複数の人々でシェアできる音楽体験となっていける実感が湧く。手応え十分。次回のリハーサルが楽しみ。

 

 

 

 

 

 

《たいようオルガン》名古屋公演

日本で最大級のパイプオルガンがある名古屋の愛知芸術文化センターに来る。2021年に水戸芸術館の委嘱で作曲した《たいようオルガン》の再演があるので、リハーサルに駆けつけた。お世辞とかじゃなくって、リハーサルが本当に素晴らしかった。

 

原作は、ぼくが知る最高の画家で絵本作家、荒井良二さんの絵本《たいようオルガン》。そして、オルガニストの石丸由佳さんは、ぼくの曲をやるのにベストな人。宗教音楽からパイプオルガンに出会ったのではなく、たくさんのパイプがある一人吹奏楽みたいだからパイプオルガンを始めた人で、絵本のカラフルな世界を音にできる稀有な音楽家。そして、ぼくの曲の楽譜を見た時に、「これこれ、私がやりたいの!」と思ったというソプラノの小林沙羅さんの澄んだ歌声には、本当に痺れてしまうし、身体の動きも演技も含めて、全身で表現する歌手。こんなベストのメンバーなので、本当に贅沢!この人選をした水戸芸術館の高巣真樹さん、ありがとう。

 

ということで、素晴らしきリハーサル。沙羅さん、由佳さんは、《たいようオルガン》を発展させて、荒井さんが新作絵本を作って、野村が新曲作って、もう一曲できて、荒井x野村作品だけで、一本の公演にできるといいなぁ、と妄想しているんだ、と言っていた。しかも、荒井さんが舞台の空間作ったりできたら、素敵だろうなぁ、と。

 

今日は、沙羅さんのお誕生日で、みんなでお祝いもできた。ハッピーバースデイ!!