野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

春の海とキラキラ星の出会い/缶櫃は素敵だ

 

今年の2月に『世界のしょうない音楽祭』で発表した新曲《雪つもり 時の流れが 春をよび》の動画が公開されました。

1 宮城道雄 洋楽に出会う

2 菊武祥庭 洋楽に出会う

 

という2部構成で、明治新曲の箏曲家の曲を題材に、ワークショップでいろいろなアイディアを出して、それを野村が新しい形にアレンジした作品。お正月に流れる《春の海》と《キラキラ星》の出会いを創出できたのは、ありそうでない組み合わせで、なかなかうまく作曲できたなぁ。菊武先生のおじいさまの名曲に取り組んだ後半も、リモートワークショップなど短時間の中で、なんとか仕上げることができた。

 

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みかのはらガムランプロジェクトの濃密な日が終わり、寺子屋やぎやに宿泊させていただいた。朝、起きると、子どもたちが集まってきて、漫画を読みながらゴロゴロしていたり、ギター部の大人たちが集まってきて、ギター、フルート、トランペット、ファゴットなどを思い思いに演奏している。ギター部なのに、何で?最初はギター部だったけど、気がついたら、他の楽器が増えてきたそうだ。自由だ。

 

やぎやには、たくさんの茶箱があり、それがテーブル、本棚など、様々な要素に使われている。さすが茶農家が営むスペースだけある。その話を伸子さんにしたところ、地元では茶箱とは呼ばずに、「かんびつ(缶櫃)」と呼ぶらしい。缶櫃で検索すると、確かにヒットする。

 

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9月11日に京都芸術センターで《踊れ!ベートーヴェン》を再演する際には、缶櫃が登場しても面白いかも。いろいろアイディアが膨らみ始める。

 

ということで、瓶原の皆さん、ありがとう。次は9月11日の京都芸術センター!!!

なんだろう?

みかのはらガムランプロジェクトによる《オペラSAGAS》の上演があったが、これが、本当に不思議な公演だった。簡単に言うと、朝10時に開演で、夕方19時半に終演なので、上演時間9時間半の長編オペラのように思える。ところが、実質の上演時間は2時間で7時間半は休憩というとんでもないものだった。

 

第1幕が畳屋さんの工場で開催。「名曲とはなんだろう?」と問いかけられる歌とともに、10時に始まり、10時半に終わる。すると、楽器の撤収が行われ、会場の片付けが行われ、お昼ご飯の後に、第2幕の恭仁宮跡に楽器が運び込まれ設営が行われて、14時に、またもや「名曲とはなんだろう?」と問いかけられる歌が歌われ、第2幕が始まる。14時半に終わると、また楽器の撤収が行われ、第3幕のやぎやに搬入され、楽器が設営される。17時ごろから第3幕のリハーサルが行われ、18時から第3幕が始まる。ところが始まって、20分ほど経ったら、直会となって、お茶やお萩が振る舞われ、観客も出演者も和む。そして、その後に、野村誠作曲の《踊れ!ベートーヴェン》(1996)が上演されて、最後に、「名曲とは何だろう?」と問いかける歌が歌われて終わった。

 

《SAGAS》という公演は、どうやら「名曲とは何だろう?」と「探す」公演のようで、探しながら、何度も名曲とは何か問い続け、そして、《踊れ!ベートーヴェン》が演奏された。今日の今日まで、なぜ、この瓶原の公演で、ぼくの曲が演奏されるのか、その意味が分からなかった。だが、今日の全部を見た後に、最後に自分の曲を上演してみると、どうやらミカノハラの土地をめぐり試行錯誤をして「名曲」を探した結果、たどり着いた「名曲」の役を、ぼくの作品が担わせてもらったようだ。それは大変光栄なこと。

 

瓶原の風景、子どもたち、大人たち、どれもとても心に残った。木津川アートが開催されてきたことから派生して、みかのはらガムランプロジェクトが始まり、今、そこから派生して、行政とは全く独立した「みかのはら〜と」という市民プロジェクトも始まっている。そして、「アートって何?」と問いかけ、何かを「さがして」いる人たちがいる。そんな渦の中に、気がつくとぼくもいて、「なんだろう?」と一緒に考える1日になった。

 

《踊れ!ベートーヴェン》で打楽器独奏で加わった會田瑞樹さんのパッション溢れるソロも素晴らしかった。9月11日には、京都芸術センターで《踊れ!ベートーヴェン》を上演するが、それに向けて、大きな何かをつかむ一日になった。9月11日が楽しみ。乞うご期待。

鶴見幸代の世界

神戸文化ホールに、鶴見幸代《竹野相撲甚句ファンファーレゲエの大冒険》のリハーサルを聴きに行く。JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の初めてのワークショップが2014年で、その時に相撲甚句を題材にしたワークショップを開催し、大相撲の相撲甚句に出会った。ところが、それから4年後の2018年、JACSHAで城崎国際アートセンターにレジデンスしている時に、竹野相撲甚句に出会った。その時にプロデューサーの柿塚拓真さんが訪ねてくれた。それから4年経った2022年、柿塚さんの企画で、オーケストラと混声合唱と打楽器独奏による鶴見の新作が上演されることになった。8年前にドリーム企画書を書いて様々な妄想をしてゲラゲラ笑っていたが、8年経って、いろいろ実ってきて嬉しい。

 

鶴見作品は明日が本番だが、ぼくも明日が本番なので、リハーサルだけでも聴きたいと訪ねた。鑑賞だけのつもりだったのに、鶴見さんと二人で舞台にあがってオーケストラと合唱団の方々に紹介された上で、竹野相撲甚句の実演とステップ実演と若干の四股体験の鶴見さん補佐役を急遽務める。指揮者の石﨑真弥奈さん、打楽器ソロの安永早絵子さん、神戸市混成合唱団、神戸市室内管弦楽団による演奏。鶴見ワールド全開で楽しかった。冒頭のオケだけでポリフォニックにメロディーが重なり合うところは、小さな編成の少ない楽器の種類を最大限に活用して色彩が七色に変化し、大変美しい。今回は合唱であり、甚句であるので、ほぼ全編にわたって合唱が入っていたので、純粋器楽でオケの色彩を味わう場面は、そんなに多くなかったので、今度は鶴見のオーケストラ曲も聴いてみたいなぁ(誰か委嘱しないかな)。それにしても、ぼくが竹野相撲甚句で新曲を書くとしても、全然違う響きと色彩の曲を書くだろう。鶴見の曲は鶴見らしい和声で、ぼくとは全く違う個性の作曲家。一緒に活動しているとお互い作曲家だから役割かぶってしまうんじゃないか、と思いそうにもなるけど、お互い全然違うんだよ。作曲家同士がJACSHAで一緒に活動する意味を改めて強く感じた。明日の成功、間違いなしだけど、成功を祈ってるよ!そして、もっともっとJACSHAで活動続けていきたいって、強く思った(そして、鶴見にこういう機会を作ってくれた柿塚さんにも感謝。柿塚さんとも、またいろいろ面白い仕事を作っていきたい)。

 

リハーサル後、木津川市寺子屋やぎやに移動。中川真さんと二人で宿泊。みかのはらガムランプロジェクトの炭本夫妻のホスピタリティに感服し、明日の本番に向けてワクワクする。

 

 

 

 

 

 

 

グレンダ・レオンを演奏する

『国際芸術祭あいち2022』がまもなく開幕。ぼくは、7月30日、31日にグレンダ・レオンのインスタレーションを演奏するパフォーマンスを行う。それに先駆けて、7月27日に会場入りし演奏を撮影する。映像は展示会場で期間中に上映される。で、明日から遠征が始まり、そのまま愛知入りする予定なので、衣装をどうしたらいいか、キュレーション担当の島袋道浩くんに質問する。現在、設営中の展示風景などを写真や動画で見せてもらう。天体のように見える展示作品が楽器になっていて、天体の音楽を奏でることができるようなインスタレーション。この空間にできるだけ邪魔にならないような服がよさそう。里村さんが熊本市内の美術館や書店などに、できあがったばかりの中野裕介展のチラシを届けに行きたいようで、それと服の買い物を合体させて、熊本市内に出かけた。いくつか候補の服をゲットしたので、あとはグレンダに選んでもらおう。

 

グレンダ・レオン パフォーマンス(出演:野村誠) | 国際芸術祭「あいち2022」

 

 

打ち合わせ のち レコーディング のち 上映会

城崎国際アートセンターとJACSHAの打ち合わせ。橋本麻希さん、樅山智子さん、鶴見幸代さんと。7月3日に第1回のワークショップを行ったが、子どもの集まりが悪く、今後の進め方について話す。

 

その後、四股1000の後、ガチャ・コン音楽祭の打ち合わせ。ニシジマ・アツシさん、永尾美久さん、福本美紀さん、山元喬さん。8月7日の大凧会館での”ぐるぐる”に向けて。ニシジマさんとお会いするのも久しぶり。サウンドアーティストのニシジマさんが、凧に詳しいこと、知らなかった。

 

午前中に3本もオンライン会議があり、午後は、山城大督さんの映像につけるピアノを自宅で録音。送られてきた詩の朗読に合う音楽を模索ののち、なんとかレコーディング完了。

 

録音が終わったので、不知火美術館に行って、映像上映を見る。無関係な複数のアーティストの作品が並んでいるようで、いくつかのつながりがある。

 

武内明子《海に描きに行く》では、浜辺で絵を描いている画家が海の水の中に入っていくが、草本利枝+佐久間新+野村誠《Tari Jeda Waktu》の第2章《田の水》では、舞踊家が田んぼの水の中に入っていく。

 

KOSUGE1-16《The Playmakers》では、イギリスのMidland Art Centreで子どもたちがKOSUGEの作品で遊ぶ様子がたくさん出てくるが、草本利枝+佐久間新+野村誠《Tari Jeda Waktu》の第1章《樹の家》でも、子どもたちが遊び出す。
 
武内さんやKOSUGEの作品と無関係なようで、いろいろ通じるところがあるんだなぁ、と通して見られてよかった。
 
草本さんの美しい映像も、大きな画面で見るのは初めてで、やはり大きな画面で見られるのはいい。佐久間さんが田んぼの水の中で泥まみれになりながら泳いでいるのが投影されている時に、小学生が20人ほどやってきて、映像をみんなで見ていたのも印象的。
 
 
 

《ズーラシアの音楽》と《Tari Jeda Waktu》

明日、明後日と不知火美術館の「アートフィルムシアター」という企画の上映会が予定されていて、出品予定の映像が諸事情により上映できなくなったらしく、急遽、野村関連の動画を上映できるように、手続きや手配などをした。ぼくの関係するのは、横浜トリエンナーレ2005に出品した《ズーラシアの音楽》と、コロナ禍のコラボ作品である《Tari Jeda Waktu》という新旧の2作品。全部で以下の5作品が上映され、全部見ると1時間。10時から18時まで毎時間1回ずつ上映だから、今日8回と明日8回上映される。入場無料。

 

武内明子《しらぬいえほんのたび》
武内明子《海に描きに行く》
KOSUGE1-16《The Playmakers》
草本利枝+佐久間新+野村誠《Tari Jeda Waktu》

 

www.museum-library-uki.jp

 

あかね児童合唱団と考えた《朝日野》の譜面を書く作業。なかなか楽しい感じになりそう。10月23日に『ガチャ・コン音楽祭Vol.2』の演目として、竹田神社で上演予定。
 
 

踊れ!ベートーヴェン

京都市木津川市瓶原ガムランプロジェクトで、野村誠作曲(児童合唱とジャワガムランのための)《踊れ!ベートーヴェン》(1996)のリハーサルに立ち会う。7月23日に、瓶原で上演され、9月11日に京都芸術センターで上演される。26年前に作曲した曲で、ガムランに子どもが加わる曲で、26年前にも貝塚ジャカルタやプランバナンの子どもたちが参加した。当時の子どもたちは、今では30代半ばになっているだろう。26年前に無名の若手作曲家野村誠が書いた音楽は、当時のガムランの世界に衝撃を与えたが、今日はガムラングループのマルガサリのメンバーだけでなく、瓶原の地元の人々が演奏に参加している。26年前の27歳の作曲家が書いた元気がいい曲を、2022年の人々と一緒に演奏する。26年前の演奏を経験しているのは、中川真さんとぼくだけ。代替わりしたメンバーとのリハーサルが本当に楽しかった。

 

26年前にジャカルタの子どもたちと考えた歌詞で、今の瓶原の子どもたちが歌っていること自体が奇跡のようで感激だった。9月11日に世界初演になる會田さんのガムラン新作のリハーサルにも少し参加させていただいた。

 

昨日は蒲生でベトナムのゴング、今日は木津川でインドネシアガムラン。全く別のプロジェクトなのに、二日連続で東南アジアのゴング文化に触れて、久しぶりに東南アジアに行きたくなった。

 

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