野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「千住の1010人 from 2020年」の短編映画/音楽と社会の表裏一体/香港レポ

「千住の1010人 from 2020年 世界だじゃれ音Line音楽祭」の記録映像というか、これは短編映画と言うべく動画が、映画監督の甲斐田さんから届く。今年度、行った様々なオンラインでのイベントが全て網羅されている上に、今年度やるつもりだった幻の「千住の1010人 in 2020年」の会場となるべき場所(船、電車、町中、スポーツ公園)などが網羅されている。オンラインで次々に繰り広げられるセッションの世界とパラレルに、本来だったら大勢が集い賑わっていたであろう場所が、無人だったり、野村しかいなかったりする。その幻の光景は寂しいような気もするが、そこに見えない人々や魑魅魍魎が集っているようにも見える。何がリアルで何がリアルでないのか、そうした問いかけがあると同時に、2020年という特別な年に、ぼくたちがどのように生きたかを提示している。泣きそうになると同時に、勇気も与えられる動画だった。来月公開に向けて、最後の追い込みを頑張りたい。

 

一方、日本センチュリー交響楽団とのpost-workshop作品集「ミワモキホアプポグンカマネ」の動画も大詰め。メインタイトルのビジュアルなど微修正に突入している。こちらも、表裏一体の二つのパラレルワールドをどのように提示するかが、大きな課題になった。つまり、一つはプロジェクトを通して生まれてきた野村誠作曲作品の演奏であり、もう一つはその背景にあるコミュニティプログラムだ。この両方が表裏一体なので、両方を提示したいのだが、その両方の表裏一体をうまくプレゼンする方法を発明していかなければいけない。今回は、音楽作品集という形態をとりながら、そこにコミュニティプログラムのことを、少しずつ匂わせたりすることが、大きな鍵になった。映像を担当して下さる日本パルスの皆さんが、粘り強く対応して下さり、ようやく出口が見えてきた。

 

2019年に作曲した「十和田十景」の10曲をスティマーザールで録音したのだが、本日はヘッドフォンで確認しながら、OKテイクのテイク選びをした。あとは、2018年の香港レジデンスについてのレポート冊子を作ろうとしていて、そのための原稿執筆に終日をつぎ込んだ。だから、ぼくを香港に招いたベリーニのことなど、色々書いていた。すると、半年ぶりくらいに、突然ぼくをベリーニ(今は中国に住んでいる)から、急にメッセージが来た。相変わらず勘がいいな。

 

 

 

 

マイアミ=自由と生き方を探求するアーティスト

午前中に「四股1000」で四股を1000回踏んで、午後は自由と生き方を探求するアーティストのマイアミ君を訪ねる。アートコーディネーターの里村真理さんも同行。主に音楽や建築の分野で活動してきたマイアミ君が今回、演劇をやろうと思い立ち、演劇を専門にやっていないものばかりで集って、「演劇」をする。マイアミ君のパートナーの向井麻理さんは解体現場から廃材などを調達して大工をする天才でもあるらしく、麻理さん作の茶室を見て感激。3日間に渡る八田人造石さんの石貨づくりを経て、今日は青島工芸さんが石貨コタツの足を作ろうとして、150kgあるので、足を作るのではなく、運搬の方法などを模索している。近所の人々が、藁で草鞋を編んでいる。草鞋づくり体験に少し参加させてもらいながら、おしゃべりする。元工場だった建物が都市の中の不思議な隠れ家のような秘密のスペースになっていて、そこに人々が集って交流していく。その交流は演劇になっていくのだろうか、映像になっていくのだろうか。

 

興奮の交流ののち、家に帰ると、野村誠x日本センチュリー交響楽団post-workshop作品集「ミワモキホアプポグンカマネ」の映像の大詰め。完成させる作業なのだけれども、未完成に向かっていく。もちろん、期限までに納品するのだけれども、どこまでも「遊び心」を持ち続けようとする態度を、少しでも動画に付与すべく、タイトルの文字やデザインなどのパッケージの仕方で粘っている。日本パルスさんが、短時間の中、全力で応えてくれている。

 

夜、佐久間さん、山森さん、徳永さんと、都城のプロジェクトの打ち合わせ。リモート打ち合わせなのに、途中で徳永さんの娘さんが画面に現れたところから、セッションが始まる。こうした交流や距離感が面白い。

 

昨日でハイドンが終わり、香港のレポート執筆作業に着手。とりあえず、3年前の3ヶ月分の日記を全部読み切り、様々な情報を抽出したので、これから編集+執筆作業が始まる。明日から3日間くらい集中してやりたい。

 

 

ハイドンを笑え!

今朝は、日本パルスの山本さん、岩田さん、センチュリー響の柿塚さんと打ち合わせ。現在、絶賛編集中の動画

 

野村誠 x 日本センチュリー交響楽団    post-workshop作品集
ワモキホ プポ  マネ
 動くオーケストラと
                             作曲家の 共振
 就    労    支    援  から    相    撲   まで

 

の編集の大詰め。既に素晴らしい音質で編集されているので、文句のつけどころもないのだが、今回は、単なる野村誠の作品集ではなく、日本センチュリー交響楽団野村誠のコラボによる作品集。で、出演者の大多数が、クラシックのオーケストラ奏者なので、オーケストラってこんな感じ、クラシックってこんな感じという先入観を払拭するジャケットにしたい。だって、実際に出会ったセンチュリー響の奏者たちは、枠に収まらず果敢にチャレンジしているし、プロデューサーの柿塚さんにしたって、(いい意味で)問題行動の人だ。このチームは、オーケストラの枠をはみ出し遊びまくり、ワクワクしている。その感じを表現するために、大人しいジャケットにしてはもったいない。そこの部分の確認をしっかりした。とてもいい打ち合わせだった。

 

夜は、「ハイドン大學」に登場。無観客だけど、アートエリアB1からオンライン配信。なので、アートエリアB1に集まった。せっかく集まったのに、ただトークするだけじゃ、自宅からと同じになるので、何が何でも潤さんと連弾しようと思って、昨日、譜面を書いた3曲を連弾した。

ハイドン盆栽 第10番

ハイドン盆栽 第11番

ハイドン盆栽 第12番

という3つのレジュメ音楽を連弾で演奏したし、1989年に「即興オペラ」をやったことを無茶振りで急に実演してみたり、最後には、ハイドンのテーマによる即興セッションもやった。急に、ボサノバのジョビンの「one note samba」をやったりもした。潤さんの解説がめちゃくちゃ笑えた。ハイドンの音楽は笑いに満ちているが、ハイドンについて語る潤さんがまたまた笑える。 潤さんと演奏したり、語り合ったり、楽しい時間だった。そして、カフェマスターの久保田テツさん、アートエリアB1の川口さん、三ケ尻さんという強力なチームが動いてくれている楽しい現場。観客の方々とは対面できなかったけど、B1の空気が嬉しい。おつかれさまーーー。

 

ちなみに、昨年、野村が自宅からやった「ハイドン大學」って、1000回以上も再生されているそうだ。びっくり。

 

www.youtube.com

 

 

 

 

連弾のハイドン盆栽/岩倉実相院の旅/音源チェック

明日の「ハイドン大學」レクチャーに向けて、鈴木潤さんと連弾する曲を書いている。ハイドン交響曲に基づく簡単なアレンジにちょっと遊びを足して、《ハイドン盆栽第10番》、《ハイドン盆栽第11番》、《ハイドン盆栽第12番》の3曲を作曲。明日はオンライン配信。お楽しみに。詳細はこちら。

 

京阪電車 なにわ橋駅|アートエリアB1|ラボカフェ|「ハイドン大學」

 

里村さんとMichaelの日本語とポーランド語のエクスチェンジで、本日は実相院と岩倉具視の家に出かけた。ポーランド人に、明治維新のことを説明したり、岩倉具視について説明したりしようとすると、なかなか難しい。岩倉を散歩する中で見つけた音を録音し、イギリスのエマとのプロジェクトSound Walkの一貫にもする予定。

 

野村誠x日本センチュリー交響楽団 post-workshop作品集「ミワモキホアプポグンカマネ 就労支援から相撲まで」の動画の音のチェック作業。1時間半、全7曲を譜面を見ながらヘッドフォンで確認して、演奏家の方々や録音の方々が本当にいい仕事をしてくださっているのに、改めて感激しながら、心を鬼にして重箱の隅をつつくような細かい部分をチェックしていく。その上で、スケジュール的にどの程度の編集をするか、修正をするかを考えていく。これは、本当に素晴らしい動画コンテンツができあがりそうだ。

 

 

金閣寺/日英オンライン音楽交流進行中

家から15分ほど歩くと金閣寺があるが、観光客が多く混み合っているので、近寄らなかった。しかし、よくよく考えると、コロナで人が少ない今が金閣寺をのんびり味わえるチャンスかも。せっかく近所に住んでいるのだからと散歩に出かける。金閣寺、拝観料は400円で、中に入れる建物はないが、あの広大な敷地の庭を存分に味わえるので散歩には最適。それにしても、金閣寺に来るの何十年ぶりだろう?

 

イギリスのヒュー・ナンキヴェルとエマ・ウェルトン(ボーンマス交響楽団)のファミリーオーケストラAuberginesと日本のだじゃ研(だじゃれ音楽研究会)の合同オンラインワークショップ。本日が3回目。ヒューの古い友人で音楽家のMary Keithが作った動画に合わせて、みんなで歌うのが本日の導入。こんな風にしてメアリーに会うとは思わなかった。続いて、ボールをパスするゲーム。日本とイギリスの人が一緒にこうして遊べるのが面白い。ダンサーの佐久間新さんも参加していて、俳優のボブ・ロックウッドがコントラバスで参加している。佐久間さんとボブの家に泊まったのが2007年で14年ぶりに二人は再会したと思う。あの頃はみんな若かった。

 

vimeo.com

ヒューが、2021年2月14日(14-02-2021)という数字を音に置き換えてパターンを作って合奏する提案をして、各自でパターンを作って演奏して録音した。ぼくは、1の時は太鼓、0の時は声、4の時はピアノ、2の時は声を出しながら唇を指でブルブルする、という演奏をした。その後、ヒューから日本のバレンタインはイギリスとは全然違うと説明があり、ぼくが日本ではチョコをプレゼントすると伝える。西川さんから女の子の愛の告白になっていて、1ヶ月後には男の子が返答するホワイトデーがあることなど説明する。イギリスでは、(主に)男性が花をプレゼントする日で、シャンパンを飲むらしい。

 

Chocolate=CCAE(ドドラミ)

Flowers=FE(ファミ)

Champaigne=CAAGE(ドララソミ)

 

 

と考えて演奏。佐久間さんにチョコと花とシャンペンに振付をしてもらい、佐久間さんの指揮で演奏。

 

 だじゃ研とAuberginesの共同作曲プロジェクト「ジグザグダンス」の音源も聴いた。だじゃ研のカッパさんとカンさんがパンデイロと大正琴で録音した1分の音源に、イギリスの人が音を重ねたリモート共同作曲。ボーンマス交響楽団の以下のウェブサイトで、ジグザグダンスの音源も紹介されている。

 

bsolive.com

 そして、前回のワークショップのビデオを一緒に見て意見を言い合う。エマが「ヴァイオリン弾いたのに、全然音が聞こえなかった」と言う。ヴァイオリンは普通に大きい音で弾いてもzoomに拾ってもらえなくて、コルレーニョ(弓の木の部分で弦を鳴らす)の小さい音だけが聞こえたそうだ。ヒューが、ヴァイオリンは大きく動くのに音が出ないビジュアルに動きを見せる楽器になったねーと面白がる。思い通りにならないことをストレスに感じるより、こうして意外性を逆手に楽しむと面白いなぁ。こんな風にして本日のリモートワークショップが終わる。イギリスの人が半分、日本の人が半分で一緒に交流できるなんて、面白いなぁ。

 

 

次々に音源が届く

野村誠x日本センチュリー交響楽団 post-workshop作品集「ミワモキホアプポグンカマネ 就労支援から相撲まで」の編集動画が届く。90分、野村誠作曲作品ばかりで、2017年−2020年の間に日本センチュリー交響楽団とのプロジェクトで生まれた音楽ばかりを一挙にまとめて収録。とても良い音で録音されていて、スピーカーやヘッドフォンで聴いて、本当に幸せな気持ちになった。

 

サウンドアーティストのMike Blowのプロジェクトのために以前、京都で風の音を録音したのだが、彼がこの音を気に入ってくれて、作品に使いたいとメールが来た。コロナでなくなったプロジェクトもいっぱいあったけど、逆に生まれたプロジェクトも色々あったなぁ。

 

1月にStimmer Saalで録音した音源の録音も届く。こちらは、どのテイクをOKにするか決めなければ。

 

旧正月、本日は初詣。2月なのに春のように暖かい散歩日和。北野天満宮まで。姪の受験のためのお守りを買ったり。

 

 

佐久間徹の寺子屋/野の古典/薬剤師序曲と交響曲/香港のレポ

中国正月。あけましておめでとうございます。

 

「問題行動マガジン」のインタビュー記事佐久間徹の寺子屋「問題行動は、問題ではない!」 – 問題行動マガジンが公開になった。佐久間新さんのお父さんで心理学者の佐久間徹さんの過激な発言の数々。めちゃくちゃ面白い。

 

「四股1000」で毎朝、安田登『野の古典』を音読していて、古事記についての解説が面白すぎて、驚きと笑いに溢れる。日本文学の古典をこんなに楽しめるのかぁという素晴らしい本。西洋音楽の古典も、こんな風に楽しめると、という企図されたのが「ハイドン大學」。ということで、2月16日の「ハイドン大學」では、鈴木潤さんと野村が、古典中の古典ハイドンの面白さを、現代的な感覚で言語化していく試み。

 

今回は、「薬剤師序曲」と3つの交響曲(75番、79番、83番)の4曲。そもそも、オペラのタイトルが「薬剤師」って、既に面白いなぁ。今日はハイドンの楽譜を見まくり、だんだん、ピアノの連弾を作曲したくなってきた。明日は、《ハイドン盆栽 第10番》をピアノ連弾として作曲するかも。

 

実は、ハイドンに全く興味がなかった野村は、4年前(2017年2月)に「ハイドン大學」のレクチャーをした時は、最初で最後と思っていたのに、なんと既に21曲もハイドンを解説していた。今回4曲やるから25曲もハイドンの譜面を読んでいる。もはや、ハイドンの初心者とは言えないなぁ。これまで解説した曲は、

 

1番、8番、12番、16番、26番、28番、37番、38番、47番、51番、54番、60番、64番、65番、78番、91番、93番、94番、95番、97番、100番 

今日は、この25曲の譜面を見比べてみた。25曲も見ることで見えてくることもあって面白い。

 

その後は、3年前の香港レジデンスのレポート冊子を作成すべく、3年前のブログを読み返す作業。3ヶ月のレジデンスも2ヶ月半まで読んだ。ここ数日で一気に原稿をまとめていきたい。

 

野村誠✖️日本センチュリー交響楽団 post-workshop作品集『ミワモキホアプポグンカマネ 〜就労支援から相撲まで』のトレイラー動画が次々にできあがっていて、それらをチェック。映像会社の日本パルスの方々が本当に音楽を楽しんで動画を編集してくださっているのが有難い。