野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Memuの録音/JACSHAフォーラム公開/大掃除

昨年11月−12月にかけて北海道のMemu Earth Labにレジデンスした。その成果音源をキュレーターのNick Luscombeのレーベルから出そうという話になり、本日は、自宅のピアノでレコーディング。

 

まず1曲目に録音したのが、北海道の海岸で撮影した石の写真に、先月豊橋の賀茂小学校の子どもたちが書き込んだものを楽譜として演奏。これは、名曲。北海道の石の表情が、豊橋の子どもたちとの体験を経由して、野村のピアノ音楽になり、色々なレイヤーがあって嬉しい。

 

2曲目に録音したのは、北海道のホロカヤントーの近くの地層にあった鳥の巣の痕らしき穴を楽譜として読んだ曲。

 

3曲目は、歴舟川河口近くの凍った表面を楽譜としてみた即興の要素の多い曲。寒かったけれども、空気が気持ちよかった。自由奔放な川の流れ。

 

4曲目は、流木の表面の霜の曲。ピアノの高音を鳴らす音楽。

 

今日は、この4曲を録音してみた。これで、明日から、香港レポートの執筆に専念できそう。

 

『JACSHAフォーラム』の冊子がpdf公開になった。

 

「JACSHAフォーラム2020 オペラ双葉山とは何か」という冊子を作成しました。多彩なJACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の活動の背景になる考え方や、今後数十年かけて展開される「オペラ双葉山」について豪華ゲスト陣との対談など話題が満載の冊子です。限定500部で非売品。数に限りがあるのでPDF公開しますが、冊子を手にとって読みたいという方は、送料をご負担いただければ、無料でお送りすることができます。ご連絡ください。
発行:2020年10月31日
執筆:鶴見幸代、野村誠、樅山智子
編集・デザイン:里村真理
フォーラムゲスト:松田哲博(元大相撲力士・一ノ矢/相撲探求家)、吉田雄一郎(城崎国際アートセンター・プログラムディレクター)、橋本麻希(城崎国際アートセンター・アートコーディネーター)、四戸香那(コントラバス奏者)
協力:城崎国際アートセンター
A4 26頁
お問合せ・お申込み:
email : sumohearingart@gmail.com
JACSHAフォーラム2020冊子PDFダウンロードURL:

 

本日は、旧暦の大晦日なので、大晦日と言えば大掃除。ピアノ周り、机周りなど掃除したり、整理整頓したりして、お正月を迎える細やかな準備をした。
 
2月16日にオンラインで「ハイドン大學」を開催。講師:野村誠鈴木潤。詳細はこちら。京阪電車 なにわ橋駅|アートエリアB1|ラボカフェ|「ハイドン大學」
 

Sound & Word Network/ハイドン/ホセ・マセダ

Sound & Word Networkの数珠つなぎプロジェクトのために作曲した小品を自宅で録音する。ピアノと声で1分の作品。Slackにデータを送る。Slackが使い慣れないので、戸惑いながら。現代のメディアに全然対応できていないけれども、なんとか送れてよかった。

 

ここ数日、「四股1000」では、安田登『野の古典』を音読していて、これが本当に面白い。声に出しながら、四股を踏みながら読むのに最適な本だ。

 

1週間後には、「ハイドン大學」のレクチャーが待っているので、ハイドンの楽譜を見ている。今日は、交響曲の83番の譜面を見ていて、「めんどり」という愛称で知られる曲だが、本当に演奏していると変なコッココッココッココッコみたいなのが、いろんな楽器に出てきて、これをバカバカしくやると、この曲は面白いんだろうなぁ、と思う。79番も見ている。2楽章がゆっくりの3拍子なのに、途中で急に速い二拍子になったりしている。鈴木潤さんとレクチャーするのが楽しみ。潤さんとせっかくのトーク配信なので、ハイドンの主題による即興セッションするとか、色々できそうな気がするなぁ。

 

今年度に実現できなかった「千住の1010人 in 2020年」は「千住の1010人 from 2020年」と企画名を変えてオンラインでやっている。オンラインで数十人ずつで集まるイベントをいっぱい開催したので、これらを映像上で重ね合わせて、バーチャルに1010人が集まり、バーチャルに千住の町のあちこちで音を奏でている体験ができないか、と日々、動画をチェックしては、映像の甲斐田さんにメールをしている。10月に香港の国際会議と行ったお茶碗セッションが、12月に行った台所セッションと混ざり合って100人になっていくようなこと。

 

昼に、恩田晃さんと打ち合わせをして、夜にTPAM関連で恩田さんとオンライントークをした。作曲家ホセ・マセダが80歳だった1997年、ぼくは29歳だった。そして、幸運にも、ホセ・マセダと野村誠という二人の作曲家をテーマにしたコンサートを2種類企画してもらい、ホセ・マセダと時間を過ごした。今にして思うと、もっとマセダといっぱい話しておけばよかった。もっと、マセダに聞けばよかったなぁ、と思う。あの不均等なわかりにくい指揮こそが、マセダの音楽の魅力を生み出していた。マルコス独裁政権下で政府の援助を受けながら、言葉を使わずに政府を批判し民主主義へのデモともとれるような大掛かりな試みを行った。ぼくはマセダの生徒じゃないけれど、でも、京都の町中で偶々一人で道に迷っているマセダを見かけ、慌ててバスを降りてお茶をした。ぼくが支払おうとすると、「学生の分は先生が払う。」と言って払ってくれようとしたので、「ぼく、学生じゃないから」と言ったけど払ってくれた。だから、ぼくはマセダの弟子なのかもしれない。ぼくがやった「千住の1010人」も、きっとマセダから受けた影響もたくさんたくさん入っている。もちろん、マセダが成し得なかったことにも、次の世代として色々チャレンジしている。マセダの話をできるのは嬉しい。

 

 

 

 

 

 

72 w(ch)ords for Stained/《石貨の島》&《都市の予感》

sound & text networkのための作曲。テキストと音楽を連想ゲームのように数珠つなぎにしていくプロジェクト。Sarah Wenigの文章《Stained》に基づいて1分の作品を作曲するターンが回ってきた。せっかくなので、1月25日、26日に豊橋のカモ小学校で子どもたちに考えてもらった和音を用いて作曲したいと思い、全部で72人の子どもが72個の和音を作ったので、四分音符=72のテンポで72の和音を鳴らしながら、72の単語を言う曲にしようと思い、Sarahのテキストから72の単語を抜き出す。明日には録音しよう。

 

マイアミくんの演劇プロジェクト《石貨の島》&《都市の予感》の顔合わせ。アートコーディネーターの里村真理さんもプロジェクトチームに加わり、ダンサーの藤井泉さん、建築家で怪談収集者の和田寛司さん、前田文化の野崎将太さん、現代美術グループhyslomの吉田祐さん 星野文紀さん 加藤至さん、撮影の三木由也さんという方々とご挨拶と今後の進め方の話し合い。一体、どんなことになるのか、皆目見当がつかないようで、でも、すごく面白いことになるだろう予感はあり。

 

昨年3月10日に予定されていて延期になり、今年の3月9日に予定されていた大田智美リサイタルの中止の発表。野村誠作曲の《アコーディオン協奏曲》(2008)の待望の日本初演が、またしても実現せず。非常に残念だけれども、近い未来の実現を楽しみに待とう。

 

明日の夜、TPAMのディレクターズナイトに出演して、恩田さんとトークする予定。

www.tpam.or.jp

 

sound and text/佐久間徹さん/ポーランド散歩/インドネシアとお喋り

作曲家のFrancesca Le Loheの呼びかけで始まったsound and text network。zoomで何度か交流してのち、いくつかのプロジェクトが開始され、ぼくは数珠つなぎの創作プロジェクトに参加している。テキストのアーティストは1ページ程度の文章を書き、音のアーティストは1分程度の音をつくり、それを数珠つなぎにしている。こちらは、12月、1月は時間がとれないので2月に担当すると宣言していたので、今日、全然チェックしていなかったslackに膨大なやりとりがあるのを読んでいって、ようやく、これに追いつく。1ページの文章を1分で歌うことができないので、単語をピックアップして断片で歌おうかなどと考えながらテキストとにらめっこ。

 

里村さんが編集中の佐久間徹さんのインタビューの件で、里村さん、佐久間徹さん、佐久間新さんとリモート会議。いよいよ問題行動マガジンでの公開間近。

 

里村さんがポーランドを勉強している関係でポーランド関係のネットワークより、日本語を学ぶポーランドからの語学留学生Michaelと会うことになり、ぼくも同席させてもらう。散歩しながら、日本語とポーランド語が飛び交う中、ぼくは、イギリスのエマとのプロジェクトのサウンドウォークにしようと、散歩しながら、時々、フィールドレコーディングで、カラスの声や工事現場の音など録音。下鴨別邸や下鴨神社などを歩く。国際ビジネスを学んで、日本企業とビジネスする際に、日本語や日本文化に関心があるスタッフがいるといないかが、ビジネスの成功に大きく影響するという修士論文を書いたこともある彼は、ビジネスの仕事を経て、日本に興味を抱き、日本文化を体感している。ポーランドでパン屋さんは5時半に開くそうで、日本で朝焼きたてのパンが食べられないことに衝撃を受けたそうだ。

 

夜は、里村さんのコーディネートで美術家の北沢潤さんとのオンライン飲み会。インドネシアジョグジャカルタ在住の潤くんと里村さんは十和田で仕事をしたことなどもあり、色々話が盛り上がっていく中、数々の雑談とともに、アートプロジェクトのこと、プロセスとプロダクトのこと、インドネシアのこと、アーカイブのことなど、触発される話がいっぱいあり、何の目的があるわけでもなく3時間半お喋りをする時間は大変楽しく、またこういう時間をとりたいと切に思った。

 

高嶺格の嘘についての嘘/Jane BentleyのReConnect

美術家の高嶺格くんのインスタレーションが、京都文化博物館で今日まで展示なので、見に行った。今日で展示も終わりなので、ネタバレでも問題ないと思うので感想。

 

まず、わざわざ、アーティストの存在意義は嘘をつかないこと、という解説まであって、安部元首相が国会答弁でついた嘘の数が118であることから、「118の除夜の鐘」という作品タイトルをつけた由来まで書いてあるのが導入。これを読んだ時点では、変だなとは思わずに、「高嶺くん=嘘をつかない人」という姿勢の表明に、凄い決意表明なのだと信じて展示を体験するのをワクワクして待つ。

 

さて、作品のコンセプトは、小さな嘘が増幅し、次から次へと加速度的に嘘が増幅するように、鉄の管を転がる鉄球が加速して音がどんどん増幅するという体験だと、懇切丁寧に説明もある。「最初に手品師がタネも仕掛けもありません」とやるように、わざわざ、鉄の球を選ばせて、それを最上部から入れると転がる音がする、という仕組み。わざわざ、手品のようにやるのが不自然。

 

さて、実際に始まってみると、鉄パイプのインスタレーションの上下にスピーカーが多数設置されていて、音像が回っていくサラウンド音響が繰り広げられる。えっ?なんで、スピーカーから音がするの?鉄球が転がる音を聴かせるならば、スピーカーは要らないんじゃないの?えっ?嘘をつかないと宣言して、鉄の球が転がる音が加速すると説明したこと自体が大嘘?えっ、高嶺くんが、「アーティスト=嘘をつかない人」とわざわざ書いていたこと自体が、悪意ある前振りの嘘?嘘をつく人を糾弾するような作品と見せて、自分自身がわざと嘘をつく作品をつくった?作品の説明文自体が嘘になっていて、作品全体が巨大な嘘で、意地の悪いアーティストの嘘を信じていいのかい?と問いかけているように思った。でも、一回だけだと確信が持てなかったので、再度並んで鑑賞。結局、3回も鑑賞した。さて、この野村誠のレポートは嘘だろうか?真実だろうか?野村の主観的な体験談と、他の人の鑑賞は全く違うかもしれない。

 

京都市美術館での荒木優光「わたしとゾンビ」も鑑賞。こちらは、スピーカー愛が溢れるサウンドインスタレーションで、スピーカーという楽器と空間との出会い。

 

夜は、Jane Bentleyと吉野さつきとのオンライン打ち合わせ。昨年3月にやる予定だったプロジェクトがコロナで延期になり続けて、とりあえず、3月に少しだけオンラインでプレイベントをして、夏以降の実施に向けて始動する予定。スコットランドは、ロックダウンで5マイル圏内しか移動できないと言うし、必要最低限の買い物と最小限の運動以外は外出不可らしいし、さらにはワクチンも打ったと言ってるし、全然状況違うなぁ。打ち合わせは面白く、そしてジェーンがスコットランド室内管弦楽団と最近収録した動画ReConnect | Scottish Chamber Orchestraを教えてくれて、認知症の人とのワークショップなどをウェブ上でデリバリーしているような感じの動画で、舞台セットなどがさすがイギリス、面白い。ぼくが日本センチュリー交響楽団と作った動画とは、全く違う方向性だけど、お互いオーケストラの人と動画の撮影をしていたのが共通で、面白い。

 

 

 

 

 

徹夜→徹家→‥‥

今朝も「四股1000」で、四股を1000回踏んで、安田登「野の古典」を音読。

 

その後、滋賀県の大津に。ながらの座・座の周辺を散策したり、博物館に立ち寄ったり、犬の散歩などをして後、ながらの座・座で、橋本敏子さんと里村真理さんと打ち合わせ。

 

そもそも、昨年『徹家の音楽会 夏至の<座座>部屋』を開催する予定だったが、コロナで延期した。豪華ゲストを6名も招聘し、ちゃんこ鍋を作って食べたり、長時間濃厚に交わり合う企画だった。これは、いずれ実現させたいが、まだ実現できそうにない。では、今だったら何がやりたいか。散歩したり、庭を見たり、お茶を飲んだりしながら、じっくり原点に戻って考え直す。ぼくは、ながらの座・座に住む。ここで生活するということをしたいと思った。橋本さんが、野村誠を展示すると考えたらどうか、と言った。動物園に動物を見に行くように、野村誠が暮らしている様子を公開する。2年前に、島袋くんのキュレーションで、吉増剛造さんが「詩人の家」というのをやっていたことも、少し思い出した。そもそも『徹家の音楽会』と言っていたのだから、徹底的に家を楽しむのであれば、住んでみるのが一番だ。幸いにも、座・座は広い。一度に40名の観客を集めてのイベントはコロナ禍では無理だとしても、数週間生活する間に分散して40名の人が訪ねてきても、十分にディスタンスもとれるし、何より、その時その場でその人との出会いや交流から音楽や何かが生まれる現場をシェアできる。うん、そんなのやりたい。幸いにも、春先は時間のゆとりもあり、そんな風にして何かを始めていくことができそうだ。里村さんも、鮒寿司づくり体験やマップづくりなど、やりたい案が生まれてきた。やりたい案が転がるように出てくる企画はいい。転がっていこう。

 

こちらが昨年の企画案。

ながらの座・座|新型コロナウイルスによる「徹家の音楽会・夏至の〈座・座〉部屋」公演延期のお知らせ

 

そして、こちらが、その前にやった「徹夜の音楽会」ドキュメント動画。

 

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コロナ禍における新しい表現/マイアミの演劇

「コロナ禍における新しい表現」という動画が公開されていることに、今頃気づく。居間theaterとのトークも面白かった。

 

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「四股1000」のホスト担当で、今朝は、安田登『野の古典』の前口上を音読した。

 

午後、マイアミくんの演劇上演の打ち合わせに、マイアミくんのお宅を訪ねる。マイアミくんとは、90年代の終わり頃に東京で出会い、歌の二階堂和美さんと、野村をゲストに招くライブを企画してもらったことがあったり、2002年に、CD「せみ」に収録した「せみ小倉」の中で、即興で詩の朗読のような歌のようなパフォーマンスをしてくれたり、その頃、我が家に10人くらい初対面の人を連れてきて我が家を突然パーティー会場にしたり、といった付き合いがあり、彼の不器用なほど表現に対して真っ直ぐな態度に、いつも触発されてきた。10年以上、いや15年以上は、会っていなかったような気がするが、突然メールで出演依頼がきた。そして、再会した。マイアミくんの住んでいる家自体が、本当に面白い空間。ここは、どこなのか、時空が歪む。地域と演劇と教育について、都市と文化について、彼が色々と考えを巡らせてきたことを聞く。プロジェクトの構想自体は、ダンサーの藤井泉さんと美術ユニットのヒスロムが出演し、野村が音楽をし、建築家の岡啓輔さんが関わり、大工/展示を前田文化の「騒音コンサート」でもご一緒した野崎将太さんが関わるもの。色々なことが不明なまま、でもマイアミくんの色々な想いを共有できたので、今日はこれでOK。あとは現場で。